Microsoft社製のOutlook(インストール版)をメインのメーラーとして利用し、メールを送受信しているWindowsユーザーは多いだろう。
かくいう私ことT.maccarone(タクト・マッカローネ)もOutlookユーザーの一人なのだが、このソフト最大の問題はパソコンの買い替え時に発生するデータ移行だ。私は長期間データ移行をしながらOutlookを使い続けているので、一つのアカウントに対しメール量は膨大で、かつ振り分け設定で発生したフォルダの数も相当なものとなっている。
しかしながらこのOutlookのデータ移行に関して、適切な記事がない。少なくとも私は見たことがない。過去にはそれらの記事を参考にOutlookのデータ移行を試みたが、思うように移行できなかった。結局は膨大な数の振り分けフォルダを手動で作り直し、移行に失敗して重複しているメールを目視で削除し、メールの仕分けルールも受信するたびに作り直していた。
ところが今年(2023年)、私はパソコンを変更するさいにOutlookのデータ移行に数年ぶりに挑戦し、簡単な方法を発見した。この方法によってOutlookのデータ移行があっと言う間に終わった。また、メール振り分けのルールに関しても簡単に移行することができた。
下記にこの記事で紹介する方法が実践できるパソコン環境、注意事項などをまとめたので、まずは一読して欲しい。
Outlookのデータ移行が障害となり、パソコンの買い替えをためらっていた方にはぜひこの記事を読んで挑戦してもらいたい。
この記事で紹介する方法では、Outlook本体に装備されているインポートとエクスポートの機能は使わない
【前提】メールデータ移行に関するこの記事の基本
前提-1-データ移行の対象はPOP接続のメールアカウント
OutlookはPOP方式とIMAP方式どちらの送受信にも対応しているが、この記事で紹介するデータ移行の方法はPOP方式のみだ。
IMAP方式でメール受信をする方も多いと思うが、IMAP方式はそもそもがメールサーバーにメールデータを残す受信方法であり、データ移行という概念がない。
振り分けフォルダ及び仕分けルールもメールサーバーに依存する場合があるので、本記事では触れない。
前提-2-メールアカウントの移行はできない
この記事で紹介するメールデータの移行方法は、メール本文と振り分けフォルダ、仕分けルールのみとなる。
メールを送受信するためのアカウント、パスワードは手動で設定することが前提となる。
もし、パスワード等メールの送受信に必要なデータが分からない場合は、あなたが契約しているインターネットプロバイダに照会するなどして、準備をして欲しい。
前提-3-Outlookアプリそのものの移行ではない
この記事で紹介するOutlookのデータ移行の方法はあくまでメール本文などのデータであり、アプリケーション自体を引っ越す方法ではない。
今使っているパソコンから、新しいパソコンにOutlookを引っ越しする場合には、Microsoft Officeそのものを移動させる必要がある。
Microsoft Officeを新たに購入してインストールする場合と違い、旧パソコンで使っていたMicrosoft Officeを新しいパソコンに移す場合は面倒だ。
引っ越すパソコンからまずはMicrosoft Officeをアンインストールして、新しいパソコンにインストールし、Microsoft社に電話等で認証を受ける必要がある。
この手順はとても面倒で、手順の間違いが許されない。本稿では主旨違いとなるので、Microsoft Officeの移動に関しては触れないこととする。
このデータ移行方法で可能なこと3つ
この記事で可能なことを3つ紹介する。
可能-1-移行ができるのはメールの見出し、本文、添付ファイル、送信済みメール、連絡先
この記事で紹介するデータ移行の方法なら、メールの見出し、本文、送信済メール(Outlookでは「送信済みアイテム」と呼ばれている)も上限なくすべてが移行できる。また下書きがあれば、下書きも移行できる。
添付ファイルに関しても上限はない。
また連絡先(アドレス帳)に関しても同時に移行できる。
可能-2-振り分けフォルダの移行
一つのメールアカウントに対し、振り分けフォルダがいくつあっても、フォルダ構造ごときれいにデータ移行ができる。
可能-3-メールの振り分けルールの移行
メールの仕分けルールが何件あっても、移行することができる。
この記事が対象としている動作環境と制限事項
Windows同士が対象だがバージョンは関係なし
私はWindows10同士でデータ移行を行ったが、OSのバージョンは大きな影響を与えないと考える。
引っ越し元、引っ越し先がお互いWindowsであれば、バージョン関係なく行える。
Outlookのバージョンは関係し
管理人はOutlook16からOutlook16にデータ移行を行った。
おそらくだが、Outlookのバージョンは関係なくデータ移行は可能だと考える。
【制限事項】引っ越し元のパソコンが壊れている場合
本記事で紹介するOutlookのデータ移行は、引っ越し元のパソコンが壊れていても、HDDもしくはSSDが壊れていなければ可能だ。
メールデータ及び振り分けフォルダも移行できる。
ただし、引っ越し元のパソコンが壊れている場合、メールの仕分けルールの移行ができない可能性が高い。詳細に関しては本文にて後述している。
【準備】USBメモリなどの記憶媒体とOutlookのインストール
本記事を読み進める前に、必ず準備して欲しいことが2点あるので、よく読み準備をして欲しい。
準備-1-USBメモリの準備
引っ越し元のパソコンから、引越し先のパソコンにOutlookのメールデータを移すのに記憶媒体が必須となるので用意して欲しい。
おすすめはUSBメモリとなる。容量としては4GB程度で十分足りるだろう。
USBメモリ以外でも、外付けHDD、Dropbox、Googleドライブ、OneDriveなどのクラウドを利用するのでも構わない。
ただし、本記事はすべてUSBメモリにデータ移行をしたことに前提に記事を書き進める。
準備-2-移行先パソコンにOutlookをインストール
下記から始まる本編の【手順-3】からは、新しいパソコンにOutlookがインストールされている前提で話を進める。
作業を始める前には、Outlookのインストールを完了して欲しい。
【手順-1-引越し元】仕分けルールの保存
まずはOutlookのメール仕分けルールを保存する作業を記す。ここで保存した仕分けルールを新しいパソコンに移植すれば、新たに仕分けルールを設定し直す手間が省ける。
なお、壊れたパソコンのHDDからこの[仕分けルール]抜き出したい方はこの項の最後を参照して欲しい。
- ファイル名だが単純に日付で良い。
C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\Outlook
上記のフォルダ内に拡張子[.rwz]のファイルがあれば、日付が一番新しいものをコピーして、別の記憶媒体(USBメモリなど)に保存しておくこと。もし拡張子[.rwz]のファイルがなければ、残念ながらメールの仕分けルールの移植は不可能となる。
この仕分けルールは自動保存されるものではなく、手動でバックアップしておく必要がある。そのため、過去に1回でも仕分けルールをバックアップしてあれば、拡張子[.rwz]のファイルから仕分けルールの移植が可能となる。ただし、仕分けルールのバックアップをしたことがなければ仕分けルールの移植はできない。
裏技的にメールの仕分けルールを生成する方法も私の知る限りは存在しない。壊れたパソコンからメールデータ移植をされる方は、仕分けルールに関しては諦めるしかない。
Outlookのメール仕分けルールの移行に関し、レジストリエディタを使用する方法に関して言及している記事も見受けられるが、絶対におすすめしない。仕分けルールを新しいパソコンで一から設定する方が絶対に良い。
【手順-2-引越し元】メールデータの保存
次の作業は、メール本文とフォルダ構成のデータを保存する作業となる。
ここで保存したファイルを、引っ越し先に移植するとメール本文とフォルダ構成がそのまま移植できる。
Outlookユーザーの多くが、マイドキュメント内のOutlookフォルダ内にメールデータを格納していると思うが、そうでないユーザーもいることを踏まえ説明したい。
Outlookを閉じないと、貼り付けができない。
上記の警告が出た場合は[はい]をクリックして貼り付ける。クラウドを利用して移植する場合、上記の警告は出てこない。
【注意】拡張子[.pst]のファイルはOutlook起動中は貼り付けが不可
メールデータである拡張子[.pst]のファイルは、Outlookを起動している間は、貼り付けが不可となっており、上記のようなエラーメッセージが表示される。
この警告が出た場合は、キャンセルをクリックし、Outlookを閉じる。
再びファイルをコピーして、記憶媒体(USBメモリなど)に貼り付ける作業を行うと良い。
【参考】以下の方法でも拡張子[.pst]ファイルに辿り着ける
【手順-3-引越し先】Outlook送受信の設定
ここからは引越し先パソコンでの作業となる。新しいパソコンにOutlookがインストールされている前提で話を進めたい。
ここでは、Outlookがユーザーの意図としない送受信が行われないように設定を変更する。
手順が2つあり面倒だが、2つとも実行すること。
1-予定された送受信を無効にする
2-接続したら直ちに送信する
【手順-4-引越し先】メールデータの移植
この作業では、引っ越し元のメールデータを、引っ越し先のパソコンに移植する方法となる。
【手順-5-引越し先】メールアカウントの設定
この段落は、【手順-2-引越し元】メールデータの保存のメールデータ移行の方法として、一番重要な箇所となる。
メールのセキュリティレベルを上げるために、メールアカウントとログイン用のユーザー名が違う場合は(Yahoo!メールのシークレットIDなど)、ここでユーザー名も再入力する。
パソコンからLANケーブルを抜く、ルーターの電源を切る、どんな方法でもいいのでインターネットの接続を切って欲しい。ネットに接続したままだとメールの読み込みが始まるなど、予期せぬことが起こる可能性を回避するためとなる。
この項目は飛ばしても構わないが、できればネット接続を切った上で下記の手順に進んで欲しい
振り分けフォルダがなど、以前のままのメールアカウントが復活していることを確認する。
引っ越し前のメールに未読があれば、その未読も引き継がれている。
問題がなければこれで終了となる。
メールアカウント設定時の注意
サーバーにメールを残す設定をしている方も多いと思うが、メールアカウントを移行する時につい忘れてしまうのが、上記の「サーバーにメッセージのコピーを残す」設定だろう。
ここにチェックを入れずに、メールを送受信してしまうと、場合によっては残しておいたメールデータがサーバーからすべて消えてしまうので、注意が必要となる。
【手順-6-引越し先】仕分けルールの移行
最後にメールの仕分けルールの移行方法を記す。
これでメールの仕分けルールの移植が完了する。新しいパソコンで新たに仕分けルールを設定する手間なく、タイパがよい。
連絡先(アドレス帳)が移植できなかった場合の対処法
本記事で紹介した方法でOutlookの引っ越しを行えば、連絡先(アドレス帳)も問題なく移植される。Outlookの連絡先(アドレス帳)は、拡張子[.pst]のファイル内に格納されているので、この記事で紹介した方法でデータ移行をすれば連絡先の移行を心配する必要はない。
例えば5個のメールアカウントを管理していた場合、5個の拡張子[.pst]のファイルすべてを移行すれば、引っ越し前のパソコンに記録されていた連絡先もすべて移行される。
ところが、バージョンや機種など色々な要因で、連絡先が完全に移行されない可能性も想定される。
そこで万が一、連絡先の移行が完全にできなかった方に向け、連絡先を古いパソコンから新しいパソコンに移行する方法を以下にまとめた。
連絡先情報を古いパソコンからUSBメモリにエクスポート(書き出し)する方法
ファイル名は[address]がおすすめ。保存先はUSBメモリにすること。
エクスポートした連絡先を新しいパソコンのOutlookにインポート(取り込む)する方法
ここでオプションを選択する必要があるが、管理人は[重複した場合、インポートするアイテムと置き換える]を選んでいる。削除作業は目視で確認しながら行いたい方は[重複してもインポートする]がいいだろう。ただし、重複した数が多いと後々手動での削除作業が生じる可能性がある。
Outlookのフォルダ構造によっては、上記図のように[保存先]が出てこない。その場合はメインとなるメールアドレスを選択すると良い。
連絡先が移行先のパソコンで反映されない場合または文字化けする場合は?
データを移行するOutlookが古く、移行する先のOutlookのバージョンが新しい場合、連絡先が文字化けする可能性も想定される。
その場合、以下に二つのパターンの対処法を記す。
反映されない、取り込めない場合はテキストファイルで取り込む
もし移行した連絡先データが文字化けした場合、エクスポートのSTEP6で選択するファイルを[Outlookデータファイル(.pst)]ではなく、[テキスト ファイル (コンマ区切り)]に変更して欲しい。
当然、インポートの手順STEP6では[Outlookデータファイル(.pst)]ではなく、[テキスト ファイル (コンマ区切り)]を選択してインポート操作を進めることになる。他は上記で示した手順と何も変わらない。
この作業を進める場合、新旧両方のパソコンに表計算ソフトがインストールされていることが前提となる。Outlookの移行記事を読んでいる以上、Microsoft Excelをお持ちかと思う。もし、表計算ソフトを持っていない場合は「無料 オフィスソフト」で検索して、表計算ソフトをインストールして欲しい。おすすめは管理人も使用しているLibre Office(リブレオフィス)となる。
連絡先が文字化けする場合のエキスポート方法
上記の方法で保存したテキスト ファイル (コンマ区切り)が、文字化けした場合は下記の手順により再度のエクスポートを試みて欲しい。
下記にその再保存の方法を示す。
ファイル名は[address]が良い。機種や設定によっては拡張子が[.CSV]ではなく[.pst.CSV]と表示される場合もあるが[.pst]を消すことなくそのまま作業を続けて問題ない。
保存先はUSBメモリにすること。
この一つ上のSTEP11の画像には[この処理には数分かかります。]と記載されているが、実際は数十秒で終わることが多い。
エクスポートは以上だが、今度は保存したこのファイルをOutlookにインポートする必要がある。
インポートに関しては手順が変わらないので、再掲はしない。上記のインポートに関する部分を参考にして欲しい。
まとめ
以上がOutlookでメールデータを移行する簡単で確実な方法となる。
上級者向けに、テキストだけで以下にまとめた。
- [仕分けルールの通知と管理]から、仕分けルールをUSBメモリにエクスポート
- 移行元パソコンから移行したいメールデータファイル[.pst]USBメモリに保存
- 移行先パソコンにOutlookをインストールする
- Outlookが起動時に自動的に送受信しないように設定する
- 移行先パソコンのマイドキュメント内に生成された[Outlook ファイル]内に、2でUSBメモリに保存したメールデータファイル[.pst]を貼り付ける
- 移行先パソコンでメールアカウントを設定する
- 不測の事態を避けるために、パソコンを一旦ネットから遮断する(このネット切断は飛ばしても可)
- メール本文、フォルダ構造が移行されていることを確認してネットに再接続
- 1でエクスポートした仕分けルールを新しいパソコンに[仕分けルールの通知と管理]からインポートする
- 最後に送受信をしてみる
以上の操作で、Outlookの移行が完璧に終わってしまう。
Google等の検索エンジンでOutlookのメールデータ移行に関して調べると、Outlookのインポートとエクスポートを機能を使ってメールデータを移行する方法が主流だ。
私はかつて何度もこの方法でOutlookのデータ移行に挑戦したが、成功した試しがない。メールデータが自分の思ったフォルダに移行しない、メールが重複するなど、記事の通りにならないのだ。
今回この記事で紹介したOutlookのメールデータ引っ越しの方法は簡単なのに確実だ。この記事を書くに当たり、Googleで上位に表示されているWebサイトやYou Tubeも検索したが、本記事が一番分かり易いと自負している。ややこしいこともない。
縁があってこの記事に辿り着いてくれた方には、よく読んだ上でぜひ挑戦してもらい、簡単なデータ移行を体感して欲しい。
すべての人のOutlookの引っ越しが成功するよう強く願う。